2022/4/28に日銀の金融政策決定会合が行われました。日本の経済動向を左右する重要な会合です。
決定されたのは、
- 金融緩和の継続
ということですが、ニュースは相変わらず円安で130円へ!とお祭りモードのようです。
さて、この記事では、
日銀が今後の経済状況をどう見ているかを読み解いていきます。
まずは、原本をご覧ください。
経済・物価情勢の展望(4月、基本的見解) [PDF 639KB]
書いてあること
ポイントを黒字と赤線で強調し、引用します。
物価の先行きを展望すると、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、携帯電話通信料下落の影響が剥落する 2022 年度には、エネルギー価格の大幅な上昇の影響により、いったん2%程度まで上昇率を高めるが、その後は、エネルギー価格の押し上げ寄与の減衰に伴い、プラス幅を縮小していくと予想される。この間、変動の大きいエネルギーを除いた消費者物価(除く生鮮食品・エネルギー)の前年比は、マクロ的な需給ギャップが改善し、中長期的な予想物価上昇率・賃金上昇率も高まっていくもとで、食料品を中心とした原材料コスト上 昇の価格転嫁の動きもあって、プラス幅を緩やかに拡大していくとみられる。
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2204a.pdf 日銀発表資料 p.4 (2)物価の中心的な見通し より引用
日銀がみる日本経済の見通しは、
- エネルギーと生鮮食品の影響を除いて
- マクロ的な需給ギャップが改善される前提で
- プラスになっていくだろう
ということです。
エネルギーと生鮮食品の影響を除いた物価(消費者物価指数:CPI)のことを、コアコアCPIと呼びます。(アメリカではコアCPI)
このデータこそがモノの価格全般に関する情報なのです。欧米のインフレはこの数字が高いので、本物のインフレが起きています。
ここで、「マクロ的な需給ギャップが改善される前提で」の部分が最も重要です。
逆にいえば、需給ギャップが改善されなければ、日銀の本予想というのは、意味のないものになる、ということです。
下の図は、エネルギー価格を含んだ物価指数(除かれたのは生鮮食品のみ)について、日銀政策委員が立てた見通しです。
ここでは、2つの前提に気をつけなければいけません。
- 需給ギャップが埋まっていること
- エネルギー価格が含まれていること
肝心の需給ギャップについて、見てみましょう。
需給(GDP)ギャップは約17兆円
はて、需給ギャップとは何だったか、おさらいです。
読んで字の如く、需要と供給の差のことですね。
マイナスなら、需要が少ないので景気は下向き、プラスになって初めて景気が上向いてくることになります。
内閣府のデータ(GDPギャップ、潜在成長率(Excel形式:62KB))を見ると、2021年10-12月期四半期別GDP速報(2次速報値)のGDP、-3.1%とあります。
同時期の日本のGDPは約540兆円ですから、かけ算をして、
540*0.031=16.74
約17兆円の需給ギャップがあるという計算ができます。
この時期といえば、コロナ感染者も少なく、一時的に経済が上向き始めた時期でもあります。
この後に感染者が増えましたので、最近の需給ギャップは広がっている、と考えるのが自然でしょう。
需給ギャップを埋めるのは政府の役割です。日銀は政府の子会社です。
ということで、次は、日本政府が直近に発表した経済対策を見てみしょう。
経済対策は
先ほどの需給ギャップを埋めるのが経済対策であり、その額がまずもって重要です。これは誰でも分かることですね。
発表資料 (https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/genyukakaku_bukkakoutou/pdf/sankou.pdf)
によると、国費は6.2兆円投じられる予定とあります。これがもたらす事業規模として13.2兆円とありますが、それでも17兆円には足りていません。
小学生低学年でも分かることですね。
そもそも、6.2兆円の数字の中で「真水」と言われる、新たに投じられる補正予算はたったの2.7兆円です。
経済状況を見て、補正予算(実質、追加で投じるお金)を組んだのか、疑われても仕方ないような状況です。
需給ギャップは埋まらない可能性が高い
小難しいようで、引き算とかけ算が出来れば、政府の経済対策のしょぼさが計算できてしまいます。
計算した通り、需給ギャップは埋まらない可能性が高いです。
となると、企業成績は上がらず、賃金の増加も限定的になるでしょうね。
以下、まとめます。
まとめ
- 日銀発表予想によると、需給ギャップが埋まる前提で、来年以降の物価上昇率は1%台と予想されている
- 需給ギャップは17兆円
- しかし、岸田政権が発表した経済対策は6兆円。全然足りない
- 需給ギャップが埋まらない=日本は低成長もしくはデフレ継続(筆者予想)
- 賃金は上がらず、エネルギー価格が高いままでは生活が苦しくなるだろう(筆者予想)
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