円安、円安と騒がしい期間が続いています。
この円安と、エネルギー価格や他の輸入物品の価格上昇を絡めたり、他の外貨と並べて価値が落ちている、悪い円安だ、という論調は後を断ちません。
現在のエネルギーや価格上昇に対する政府の対応は良くありません。
その点において、批判するという立場は一致しますが、円安という事象に対しては別の立場を取らざるを得ません。
まず、円安が日本経済に与えている影響は、先のブログで述べた通り、軽微です。
一方で、為替に対しては、変動相場制を採用している以上、特段やれることはないのです。
今回は、その理由から円安で騒ぐこと自体が、どう転んでも無意味であることを説明します。
私の意見でも何でもなく、そういうもの、なのです。
結論
結論を先に述べると、「変動相場制を採用する先進国は、為替の安定を放棄しているから」です。
代わりに、「自由な資本移動」と「金融政策の独立性」を選んでいるのです。
国際金融のトリレンマ
国際金融のトリレンマという言葉があります。まずは下の図をご覧ください。
トリレンマというのは、3つの選択の間でどれかを捨てなければいけない。
3つは同時に達成できないことを意味します。
よく聞くジレンマと似ていて、ジレンマというのは2つの選択の間で悩むこと、ですね。
ジ(di-)は2を、トリ(tri-)は3です。ギリシャ語から来ています。
このトリレンマを、国際金融に当てはめたものが上図です。
3つから2つしか選べない
国際金融のトリレンマでは、以下の2つだけを受容することができるのです。
- 「自由な資本移動」
- 「固定相場制」
- 「金融政策の独立性」
資本主義国では
先進国では、資本主義が成長の源泉ですので、「自由な資本移動」となる投資や土地売買の自由は外せませんね。
そこで、「金融政策の独立性」か「為替相場の安定」のどちらかを選ぶことになります。
ユーロ圏内の国々は、統一通貨をとる一方、各国での金融政策を放棄。代わりに金融政策は欧州中央銀行が行なっています。
日本やアメリカでは、もちろん「金融政策の独立性」を選択しています。結果として、為替相場の安定を放棄(=変動相場制)しています。
社会主義国では
社会主義または共産主義の国は、自由な資本移動ができません。
よって、残りの固定相場制や独立した金融政策をとることになります。中国などがまさにそうですね。
まとめ
日本やアメリカは、「自由な資本移動」と「金融政策の独立性」を選択しているため、「為替の安定」を放棄しています。
変動相場制をとっているので、為替は二国間の取る金融政策の違いによって動きます。
金融政策は、各国の経済状況を見て行うものです。
直近の円安による経済への悪影響は限られたものである以上、どうこう言えるものでもないのです。
私は経済の勉強をしたことはありませんが、一般則というか情報を消化するのに調べていくとこういった仕組みに行き着くのです。
私も英ポンドで大損をこいた経験がありますから、騒ぎたい気持ちも分かります。
でも、根本の仕組みはそういうもの、ということです。
一つ知れば、騒がしいニュースも落ち着いて見ることができますよ。
もっとも、外貨預金やFXをやっている方は上がり下がりそのものに反応するのが性分ですね。
SNSでやたらと円安を騒いでいる方がいれば、騒いでいる理由は何か?を見通すきっかけになれば幸いです。
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