円安の拡大が続いています。「悪い円安」と報じられることも多くなってきました。
経済新聞やコラムなどで目にするデータは大抵が恣意的です。
「悲観的な情報は、楽観的な情報より強く捉えられがち」です。
しかし、「一体、誰にとって」悪いのでしょうか。よくよく考えてみると、漠然と不安を煽るように書かれていることが多いと思います。
「経済新聞が言っているし、なんか不安。」という方もいるかもしれません。
経常収支で赤字、貿易収支で赤字、実効為替レートが低下しているなど、の報道だけに接しているとそうなります。
そんな不安への対策は、自分でデータを探しに行くしかありません。ここから、自分で少し調べてみるのです。
経済成長とこれらの指標が関連性の少ないものである、ということは調べればすぐ分かります。
海外の例などを知らずに、日本だけのデータを見るからそうなったりします。
投資界隈も同様で、他の資産・通貨への分散戦略が対策と言わんがために、為替ニュースを取り上げます。
恐らくは、円安に振れているという事象自体に目を付け、問題があると言いたいだけで、実際のデータから読み解くという作業をしている方は少ないように思います。
これが、マスコミであったり界隈のインフルエンサーのポジショントークです。
そういうものだと知っていて、その情報に触れるかどうかで大きく違ってきます。
データを用いたとしても、根拠薄弱(視点がミクロ過ぎたり)、ちょっと調べれば学者がより詳細な反論をしていたり。
要は、自分でデータを見て考える以外に、情報を判断する手段はないのです。
では、どの情報がより信頼性の高いものなのか?
それは国が出すデータです。元の資料を読むわけですね。
ただし、非常に読みにくい、つまらない資料だったりするので、そこを乗り越える努力は必要です。
対価として、自分で考える習慣をつけることができます。
前置きが長くなりましたが、この記事では、日本銀行の政策委員会の審議委員が作成したデータを紹介します。
引用するデータ
去る3/24に日本銀行政策委員会 審議委員の片岡剛士氏が青森県で行った挨拶(講演)の中で、分かりやすいデータがありますので、引用します。
詳細に入る前に、ここで使われている「交易条件」という言葉を説明します。
これは、貿易に及ぼす条件のことで、輸出物価と輸入物価によって決まります。(ともに指数)
- 交易条件が改善=輸出物価が高まる
- 交易条件が悪化=輸入物価が高まる
ということです。
交易条件の変化
このグラフを見てザッと分かることは、
- この10年で最大の悪化
- 輸入価格が上がっている
さらに細かく見ていきます。
少し読み取りにくいですが、交易条件(全体、円ベース)は-15.9%。
このうち、黒い部分で塗られている為替レートの影響は、-1.4%の悪影響。
つまり、「2022年初頭の日本国と他国間の貿易にとって、昨今の円安の影響は-1.4%」と読めます。
「悪い円安」という言葉は、貿易にとって悪いという意味では間違っていません。
しかし、-1.4%という数字を見れば、報道などで目にするインパクトよりも遥かに小さいように感じないでしょうか。
輸出面では、為替レートの影響はほとんど見えません。輸出入の価格に為替レートがのっかっているため、輸出入トータルの為替の影響は-1.4%ほどと言えます。
これは、片岡氏が注釈4に記述する通りです。
4 なお、為替レートは、円ベースでみた輸出価格と輸入価格の両面に影響するため、全体として、交易条件に与える影響は大きくないことに注意が必要です。
【挨拶】 わが国の経済・物価情勢と金融政策 青森県金融経済懇談会における挨拶要旨 全文 p.11 注釈4
データを見れば、議論の余地もほとんどなく、それ以上でもそれ以下でもないことがはっきり見て取れます。
まとめ
今回は、為替に関する報道を冷静に見るためのデータを紹介しました。
一度データを見て読み取ることをすれば、漠然とした円安に関する報道の善し悪しを自分で判断できるようになります。
日銀(中央銀行)がダメ、役立たずという方でも、一度本データに目を通されることをオススメします。
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